ITシステム

行政手続きのIT化について(手続きは原則、電子申請に。デジタルファースト法が成立)


行政書士にとって官公署などへの許認可・登録申請等の行政手続きは重要な職務ですが、従来それらのほとんどは紙ベースでの手続きでした。過去を振り返ると、行政手続きのなんと紙中心であったことか。申請書に加え膨大な添付書類を全て紙で提出。さらに役所が異なると同じ添付書類をなんども提出するなど不効率極まりないものでした。
近年の少子高齢化時代においては、全ての国民がそれぞれの持つ能力を最大限に発揮し、「持続的で豊かな暮らし」を実感できるようにしなければなりません。そのためには、子育て環境の充実、働き方改革、生産性の向上、高齢者の安心・安全などにつながる効率的な行政手続きの仕組みを整備することによって活力ある社会を作っていくことが必要です。また、行政府が提供するサービスが、時間と場所を問わず、それぞれのニーズに対して最適な形で国民に届けられることが重要です。
このような状況認識と反省を踏まえ、2017年5月に政府は「デジタル・ガバメント推進方針」を打ち出しています。これは、「利用者中心の考え方」と「デジタル技術の活用」を組み合わせることによって、利用者と提供者双方のコストを低減しながら、利用者にとっての価値を最大化するために、政府や地方自治体のサービス提供プロセスをデジタル視点で抜本的に見直す取り組みです。そして利用者の手続コストを徹底的に削減するために、例えば、書類の提出等が不要となるバックオフィス連携といった、デジタル処理を前提とした業務プロセス改革を含みます。

私共、行政書士をはじめとする各種士業もこれらの政府方針を理解し臨機応変に対応・追随して行く必要があります。特に以下に述べる「行政手続簡素化の3原則」を法案化したデジタルファースト法は、2019年3月15日に閣議決定され2019年5月24に成立しました。原則として行政手続きを電子申請に統一するものであり、士業としてはこの法律の主旨をよく理解しておく必要があります。
本法案は、一言で言うと「行政手続きの利便性向上と国民や企業の負担軽減をはかる」ことを目的としており、特に行政手続および民間取引のIT 化に関して「画期的・効率的なサービスの提供」を実現するために、具体的には以下の「行政手続簡素化の3原則」を戦略として打ち出しています。
1.デジタルファースト原則 → 行政手続の電子化の徹底
2.コネクテッド・ワンストップ原則 → 民間サービスも含め、どこでも/一か所でサービスを実現
3.ワンスオンリー原則 → 同じ情報は一度だけ提出の原則

以下、もう少し詳しく「行政手続簡素化の3原則」を解説します。

1.デジタルファースト原則

「デジタルファースト原則」とは、まずは、手続の電子化の徹底を前提としつつ、さらにデジタル技術を徹底的に活用し、デジタル処理を前提としたサービス設計を行うことにより、「原則として、個々の手続・サービスが一貫してデジタルで完結すること」と定義されています。この際、手続主体と受け手の接点のみならず、事業者・国民や行政内部での処理も含めて一貫してデジタルで完結することを指します。これは、「IT利活用に係る基本指針」に記載された「電磁的処理の原則(IT優先の原則)」に相当するものであるとともに、欧州等で規定される「デジタル・バイ・デフォルト」に相当するものです。

2.コネクテッド・ワンストップ原則

「コネクテッド・ワンストップ原則」とは、「民間サービスを含め、複数の手続・サービスがどこからでも/一か所で実現するという方針」と定義されています。これは、特に行政手続に係る取組を念頭においているようです。利用者に対して画期的・効率的サービスを提供するため、関連する複数の行政サービスを民間が提供するサービスと「コネクト」して、いつでもどこでも簡便にワンストップで提供するという原則です。

3.ワンスオンリー原則

「ワンスオンリー原則」とは「一度提出した情報は、二度提出することを不要とすること」と定義されています。即ち、行政手続において、まずは、事業者・国民が一度提出した情報については、同じ内容の情報を再び求めないようにするとともに、バックヤード連携環境の整備等を通じて、行政内において異なる省庁・部局間(異なる手続間)での情報連携を進めることにより、必要書類・情報の削減、ひいては、事業者・国民における行政手続コストの削減を実現するものです。

これからの士業としては、このデジタルファースト法案の主旨(行政手続簡素化の3原則)を十分理解し、政府の取り組みと連携しながら、依頼人(国民)のために合理的で効果的なサービスを提供して行きたいものです。

■ご参考

因みに、デジタルファースト法の正式名称は、
「情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るための行政手続等における情報通信の技術の利用に関する法律等の一部を改正する法律」
であり、その目的は、
「情報通信技術の活用による行政手続等に係る関係者の利便性の向上並びに行政運営の簡素化及び効率化を図るため、情報通信技術を活用した行政の推進に関する基本原則及び行政手続等を情報通信技術を利用する方法により行うために必要となる事項等を定めるとともに、住民票及び戸籍の附票の記載等に係る本人確認情報の保存及び提供の範囲の拡大、電子証明書及び個人番号カードの利用者への国外転出者の追加、個人番号利用事務への罹(り)災証明書の交付に関する事務等の追加等の措置を講ずる必要性を全うすること」
です。





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