改正行政書士法が施行(2026年1月1日)されました

2026年(令和8年)1月1日に「改正行政書士法」が全面施行されました。
これは、2024年(令和6年)6月14日に公布された「行政書士法の一部を改正する法律」を施行(公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日)するものとなります。
以下にこの改正によって行政書士の実務や制度に大きな影響を与える主要な5つのポイントを解説します。
今回の改正の目玉としては、「特定行政書士の業務範囲拡大」、「無資格代行への規制明確化」、ならびに「デジタル化への対応(職責の新設)」等が挙げられます。
1. 特定行政書士の業務範囲が拡大
特定行政書士とは、行政庁に対する不服申し立ての代理権が付与される行政書士です。
旧法では、特定行政書士が作成した許認可書類に関する不服申立て手続きの代理と書類作成の範囲に限られていました。
改正内容: 特定行政書士が「作成することができる」官公署提出書類に係る許認可等についても、代理・書類作成が可能に拡大されました。
単に「すでに作成した書類」だけでなく、将来作成される可能性のある書類に関しても関与できる範囲が広がった点がポイントです。
根拠条文: 第1条の4第1項第2号
2. 「無資格者による業務制限」の明確化
要旨: コンサルティング会社や民間業者が「コンサル料」名目で無資格で書類作成を行うことへの対策が強化されました。
改正内容: 従来の「報酬を得て」という文言に、「いかなる名目によるかを問わず」という文言が追加されました。意図としては「事務手数料」や「成功報酬」といった名目であっても、無資格者が実態として書類作成の対価等を受け取れば違法であることを明確にしました。
根拠条文: 第19条第1項(業務の制限)。
3. デジタル化への対応(職責の新設)
要旨: 行政手続きのオンライン化に伴い、行政書士の役割が再定義されました。
改正内容: デジタル社会の進展に応じ、情報通信技術(IT)を活用して国民の利便性を高めるよう努めることが「職責」として明記されました。
根拠条文: 第1条の2第2項(職責)。
4. 行政書士の「使命」の明文化
要旨: 行政書士が何のために存在するのか、という根本的な理念が法律の冒頭に配置されました。
改正内容: 行政手続の円滑な実施と、国民の権利利益の実現に資することを使命とすることが明記されました。
根拠条文: 第1条(使命)。
5. 罰則の強化と「両罰規定」の導入
要旨: 無資格者による業務(違法行為)に対する抑止力を高めるため、罰則が厳格化されました。
改正内容: 無資格者が業務を行った場合、その本人だけでなく、所属する法人(会社)にも罰金刑が科される「両罰規定」が整備されました。特に「補助金申請」や「ビザ申請」を資格なしで行っている会社への取り締まりが、これまで以上に厳格な運用になることが予想されます。
根拠条文: 第21条、第22条の4(両罰規定)など。
以上が今回の改正法の概要ですが、「デジタル化への対応」については単なるマナーの話ではなく、行政書士が守るべき「プロとしての責任(職責)」として法律に組み込まれました。具体的にどのような内容なのか、条文の構成に沿ってもう少し詳しく解説します。
「デジタル化への対応」についての補足
1. 根拠条文:第1条の2 第2項(新設)
改正法では、新たに「職責」という一条が設けられ、その第2項にデジタル対応が明記されました。
●行政書士法 第1条の2 第2項
「行政書士は、その業務を行うに当たつては、デジタル社会の進展を踏まえ、情報通信技術の活用その他の取組を通じて、国民の利便の向上及び当該業務の改善進歩を図るよう努めなければならない。」
2. 解説:行政書士に何を求めているのか?
この条文は、行政書士に対して以下の2点を「努力義務」として求めています。
●国民の利便の向上(利用者目線)
電子申請の積極活用: 紙の書類を窓口に持参するのではなく、オンライン申請(GビズIDやJグランツなど)を優先的に利用し、依頼者の負担を減らすこと。
非対面対応: Web会議システムによる面談や、電子メール、チャット、電子署名の導入により、場所を問わないサービス提供を行うこと。
●業務の改善進歩(士業のプロ目線)
ITスキルの習得: 常に変化する行政のデジタルシステムに対応できるよう、継続的に学習すること。
情報のセキュリティ確保: デジタル化に伴う情報漏洩リスクに対し、適切な対策(クラウド管理や二要素認証など)を講じること。
3. なぜ「努力義務」なのか?
「〜しなければならない」という強制義務ではなく、「〜努めなければならない」という努力義務にとどまっているのは、以下の理由があると考えられます。
●環境の過渡期: まだ全ての行政手続きがデジタル化されているわけではなく、自治体によっても差があるため。
●依頼者の事情: 依頼者の中にはデジタルに不慣れな高齢者等もおり、柔軟な対応を残しておく必要があるため。
しかし、法律に明文化されたことの意義は大きく、今後は「パソコンが使えないから紙でしかやりません」という姿勢は、行政書士としての職責を果たしていないとみなされる可能性があります。

