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新型コロナ対策として登場した株主総会インターネット出席方式の法的妥当性について


今年(2020年)、新型コロナ対策として登場した「出席型のインターネット株主総会」は、インターネット経由で株主がリアルタイムで質問や動議が可能であるが、これは技術的には極めて難しい。
従来からインターネットによる事前の議決権行使や参加型のインターネット株主総会(総会のライブ配信を視聴するのみ)はあった。しかし、リアルタイムでの質問や動議が可能なインターネット出席は今年が初である。

現行会社法にはインターネット出席の定義が無いので、企業側はリアル出席と同等の条件を担保するためにネット環境の整備をどのように行えばよいのかの判断基準が得られない。
従って会社側は、総会成立条件不備という理由で株主から総会決議の無効や取り消しの訴えがあった場合の訴訟リスクに備えることができないことになる。企業の総会実施部門と経営者は相当悩むのではないかと想像される。極めて厄介な問題である。

総会会場では一定の質疑応答時間内で、株主の挙手→議長の指名→株主の質問→経営陣からの回答、という流れが一般的だが、これをインターネット出席の全ての株主に対してリアルタイムに同条件で実施するのは技術的にも課題が多い。

特に通信環境等の影響により、株主総会の映像・音声配信の乱れ、あるいは一時中断などの通信環境トラブルによってリアル出席と同等の条件が維持できなかった時などに、総会が成立したという言うための立証をどのように行えばよいのかが不明である。

このような総会不成立の訴えがなされたとき、最終的には法廷における裁判官の自由心証主義による判決を待つことになるが、裁判官とて判断が大変であろう。
なお、通信障害の問題について法制度上の対応(立法論・解釈論)を検討する際にはドイツ株式法が参考となる。ドイツ株式法ではその243条3項1号において、株主総会に電磁的な方法をもって参加する権利の行使が技術的な事故(通信の中断)によって妨げられたことは、会社に悪意又は重過失がない限り、株主総会決議の取消事由に当たらないものとされている。

因みにソフトバンクグループの例であるが、該社の株主総会招集通知には、インターネット出席方式における質疑や動議は所定のウェブサイトからテキストメッセージの送信により行うことになっている。(障害者などテキスト入力が難しい人はどうするのだろう?)
そして、通信障害によってインターネット出席株主が被った不利益について、会社側は一切責任を負わないと明記されている。(過失の度合いに関わらず免責扱いなのか?)
また、インターネット出席は、総会当日に所定のウェブサイトにログインして参加するが、ログインには、議決権行使書に記載の株主番号、所有株式数、株主の郵便番号を入力すればよく、確実な認証のための秘密の情報が存在しない。正当な議決権行使の権利を持つ者以外の者がログインしないようにする認証方法や複数人が同一ID(同一の株主番号、所有株式数、株主の郵便番号)でマルチログインしてきた場合にどう対処(先着優先?)するかなど、基本的なセキュリティ対策も気になるところである。

このようなインターネット出席について、どんな場合が決議取消事由に該当するかについては、今後判例の積み重ねを待つしかないのが現状であり、それまでの間、インターネット出席方式の株主総会を開催する企業はそれなりのリスクを負う覚悟が必要であろう。


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事務所代表 八津川直伸

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