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認知症患者の遺言可能性について


認知症を患った方は有効な遺言書を残せるか?

高齢化の進展とともに、認知症患者数も増加しています。「日本における認知症の高齢者人口の将来推計に関する研究」の推計では、2020年の65歳以上の高齢者の認知症有病率は16.7%、約602万人となっており、6人に1人程度が認知症有病者と言えます。

認知症を患うと本人の生活はもとより、家族と共に様々な問題・課題を抱えることになります。
その中でも大きな問題の一つとして挙げられるのが、生前に確実な遺言書を作成出来なくなることです。
これによって親族間での醜い相続争いの原因となったりします。

以下に認知症と診断された方の遺言可能性について述べて参ります。

 

遺言ができる要件

遺言ができる人(要件)とは、以下の2つを同時に満たす人。
・15歳に達した者(民法961条)
・遺言能力※のある者(民法963条)

※遺言能力とは遺言内容を理解するのに必要な能力のこと。

 

認知症と診断された人の遺言可能性

認知症と診断された人は、基本的に遺言能力が無いとされ、その人が作成した遺言書は無効となる。
法定の3種類の自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言(下段のご参考を参照)のいずれの方法で作成した場合も無効となる。

例えば、親が認知症になっていることを隠して相続人が公正証書遺言を作らせるといったことがありますが、もし何か問題があって裁判沙汰になれば遺言書無効と判決されます。

 

認知症であるか否かの判断

「認知症かどうか」という医学的な診断は医師によってなされる。

なお、認知症であっても遺言能力があると判断される場合がある。

一概に「認知症である=遺言能力がない」と判断されるわけではない。
判断能力が一時的に回復した状態であれば、医師2名以上の立ち会いのもとで遺言をすることができるとされている。(民法973条)。
なお、遺言能力があると判断されるための具体的な要件としては以下の3つが必要。
①事理弁識能力を一時的に回復したときであること
②医師2名以上の立会があること
③医師が立ち会い、遺言者が遺言作成時に事理を弁識する能力を有していた旨を遺言書に付記し、これに署名押印をすること

しかし現実には認知症の方が遺言を作成することは以下の理由で極めて厳しいと言える。
(1)認知症の方の事理弁識能力が回復したとしても、立ち会いの医師を2人用意することが困難である。
(2)公証役場において、少しでも会話にズレが生じた場合、事理弁識能力がないと判断され遺言の作成が認められない場合が多い。

 

任意後見人による遺言書作成は可能か

任意後見の場合、法定後見とは異なり行為制限が無いので遺言書を作成することは可能。しかし遺言当時に本人の遺言能力がないことが証明されればやはりその遺言書は無効となる。

 

相続手続きをスムーズに進めるために

遺言書があった場合、遺言書で受取人として指定された相続人と遺言執行者は、遺留分を除き遺産分割協議をせず(他の相続人に同意を求めることなく)相続手続きを進めることができます。

今後ますます高齢化が進む日本社会において、遺言書は相続手続きをスムーズに進めるための書証となりますので、親族間の争いを避けるためにも、財産を有する被相続人は認知症になる前に遺言書を残すことが求められます。

なお、相続の基本事項と代襲相続については、こちらの記事をご覧ください。

 

(ご参考) 遺言書の種類

遺言書には普通方式遺言(3種)と特別方式遺言(2種)がありますが、以下に通常用いられる普通方式遺言を説明します。

 

<自筆証書遺言>

遺言者が、遺言全文・日付・氏名を自書し、押印をすることで、その遺言書は遺言としての効力が
認められることになります。
パソコン等の機器を使用して書いたものは認めらません。
遺言者が自由に作成できる特徴がありますが、遺言書を個人で管理する関係で偽造や隠蔽のリスクがあり、また遺言能力で揉める可能性もあります。

 

<公正証書遺言>

公正証書遺言とは、2人の証人が立ち会いの下、公証人が遺言者から遺言内容を聴き取りながら作成する遺言です。作成した遺言書は公証人役場で保管されます。
専門家の公証人と相続人で確認を取りながら作成する遺言書なので信頼性が高いのが特徴です。

 

<秘密証書遺言>

秘密証書遺言とは、遺言者が自分で用意した遺言書を2人の証人と同行して公正役場に持ち込み、遺言書の存在を保証してもらいます。証人と公正人には遺言の内容は公開せず、遺言書の存在事実だけを証明するためのものです。
なお、自筆証書遺言と異なり、署名と押印だけ自分で行えば、後の内容はPCでの作成・他の人の代筆が認められているが特徴です。


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事務所代表 八津川直伸

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